【世界で働き・生活する日本人@ホワイトホース】カナダの伝統工芸技術を引き継ぐ日本人

【世界で働き・生活する日本人@ホワイトホース】カナダの伝統工芸技術を引き継ぐ日本人

カナダでは質の高い木工製品が、ギフトショップなどで売られている。
国の約半分が森林ということで、林業が盛んであり、
木材を使った製品が数多く出回っている。

僕がカナダのホワイトホースで出会ったのは、
人間の顔や動物をモチーフとしたカービング(彫刻伝統工芸品)
と呼ばれるものである。

それらを作っている日本人の職人に、運良く会うことができた。

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彼の名前は森島雄也(もりしま ゆうや)さん。
日本の服飾学校を卒業し、サイクリングショップのメンテナンススタッフとして4年間勤務。その後、バンクーバーのサイクリングショップで7ヶ月ほど働いた後、ホワイトホースに移住。現在はカフェで働きながら、カービング技術を磨いて技術を習得中である。
彼がカービングに出会ったのは、たまたま開催していた技術プログラムに参加したのがキッカケだ。

彼は手先が器用であり、モノづくりが好きなため、カービングの魅力に取り付かれるのは時間の問題であった。

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カービングに出会ってから、もうすぐ3年が経つ。
プログラムに参加し始めてからは、毎週定期的に工房に通う。
技術を上げることに精を出す日々が続き、今でも通い続けている。
彼は自分に技術が無いのが分かっているので、作品を家に持ち帰り、
取り組むこともしばしば。

デッサンが苦手とも分かっているので、それを中心とした勉強もかかさない。

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一つの作品には、半年〜1年はかかる。
技術を取得してから時間も経つので、
デッサンからスタートして自分自身で彫り進めることもできる。
それでもメンターカーバー(先生みたいな人)から、

アドバイスをもらいわないと、完璧に完成させることができない。

IMG_2013   *いつでも確認できるように、作品の経過を写真にて保存

彼は、まだ独り立ちできないことに、焦りを感じている。
さらに技術の習得をするためには、人とは違うことをやらなければいけない。
デッサンの本、カービングの作品集、歴史の本、日本の彫刻の分などが、彼の部屋にはたくさんあった。

技術だけでなく、カービングの背景を知ることが重要なのを理解している。

IMG_2011   *森島さんの作品1
カービングのデザインには基本のルールがある。
黒と赤を中心とした色使い、デザインの比率、人と動物のモチーフなど。
そういったルールを守りながらも、彼はオリジナルテイストを出す努力も怠らない。
まずは下積み10年という、長い時間をかけてカービングに触れていこうとする姿勢に、

彼の慎重さがうかがえる。

IMG_2010   *森島さんの作品2

IMG_2027   *バンクーバーで行われた展示会のパンフレット

まだ未熟だと彼は言う。
僕からしてみれば立派なアーティストだ。
最近、バンクーバーで展示会があり、実際に彼の作品が出品された。
作品の販売もかねている展示会あり、そこで彼の作品が売れたのである。

実績をあげても気持ちが浮わつくことなく、彼は次の作品に目がむいてる。

IMG_2017   *材料のもとになる木材。

IMG_2018   *作りたい作品に近い大きさに削りだす

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カービングの難しいところは、引き算で作業が進行していくコトだと言う。
削るのは簡単だが、一度削りすぎると後戻りができない。
修正をしていけば、していく分だけ、作りたいものと違う作品ができてしまう。

足し算ができない分、削ることに神経を集中するのは、根気が必要な作業である。

削るのが慎重になってしまう分、彼の作品は完成するのに時間がかかる。
その点の技術力は、ベテランが長けている。
メンターの人たちは、どれだけ削ればいいか分かっているので、ダイナミックに彫刻刀を作品にいれていく。

その削る技術力が、ベテランとのキャリアの違いでもある。

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彼はモノづくりが大好きだ。
手を動かすことに面白さを見いだし、立体的な構造に無限の可能性を感じているという。

彼が作ろうとしているのは、2次元では物足りないのだろう。

彼の作品には、深さのこだわりがある。
深さに強弱をつけることによって、陰の付き方が変わってくる。
それによって、作品の印象がだいぶ変わるという。

僕はそれを聞いた時に、プロ意識を感じた。

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「100年後にも残る作品を作りたい」と言った時の彼の表情は、
とてもいい顔をしていた。
今の思いを未来に乗っける作品を、彼は作り出そうとしている。
有形なものに、無形の思いを乗せた時に、作品が魂を持つ。
100年後の未来人は、その作品を見たときに、どのように思うのだろうか。
恐らく、今の森島さんと同じ思いをだくことだろう。
そうやって伝統技術は、連綿と引き継がれていくのだ。

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熊谷 賢輔

6年間の商社勤務を経て退社。その後は、自転車で日本一周を実行し、続いてアラスカ→カナダ→アメリカ西海岸→メキシコを距離にして11,000kmを11ヶ月をかけて走破。帰国後は、日本で旅しながら仕事をするワークスタイルを実践中。ひとつの仕事に固執するのではなく、常に新しい価値や出会いを創造していきたい。

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